グローリアは平凡な娘だった。平凡な田舎の村に生まれ、五人の兄弟の末娘として育った。父は畑を耕し、母は機を織って暮らしていた。グローリアから、特別なところを探すことは難しい。さして美しくもなく、賢くもなく、だからと言って劣っているわけでもない。嫌われず、好かれず。愛されず、憎まれない。彼女の唯一非凡なところは、獅子のたてがみのように豊かな、金の髪だけだった。 
 十五の時に、グローリアは修道院へ入った。小高い丘の上にある、古くて小さな修道院だった。そこでグローリアはその美しい髪を隠し、粗末な生活をしながら、神に祈る日々を送った。畑を耕し、手仕事をし、質素な食事で腹を満たす日々。飽きもせず、疑いもせず、模範的な修道女としてグローリアは生きた。 

 僕はそれを、ずっと眺めていた。僕はグローリアを知ったその時から、見つめ続けていた。神に祈るグローリアを憎々しく、あどけなく眠るグローリアに親愛の念を込めて、僕の瞳は常に彼女を追い求める。彼女のどこに惹かれたのかは分からない。あるいは、その平凡さが堪らなく愛おしかったのかもしれない。 
 グローリア、僕のグローリア。どうして神になど祈るのだ。君の愛を一身に受ける神が憎い。僕に見向きもせず、神だけを胸に抱く君が憎い。 

 グローリア、君が神を憎むようになれば、どれほど素敵なことだろう。 

 僕はグローリアのために、町を盗賊に襲わせた。盗賊はたくさんの人間を殺し、金品を奪う。町は崩壊し、グローリアの家族は残らず死んだ。そして最後に、盗賊たちは修道院に火をつけた。 
 神のために祈り、神のために生きる、そんな場所が無残にも燃え落ちるさまはとても面白い見せものだった。風が吹くたびに、赤く伸びる炎は揺れ、右の森に燃え移り、左の畑を焼け焦がす。 
 どうだいグローリア。神は君を愛してくれはしないだろう? こんな過酷な試練を与える神を、どうして愛せるというのだろう。 

 だけど彼女は燃え残った小さな祈り場の、十字架の前で祈る。泣きながら、縋るように手を合わせ、自らの不幸を嘆き祈るのだ。 
 なぜだ。どうして役立たずの神を信じられる? 姿も見せず、手も差し伸べず、ただ君を不幸にするだけの存在が、どうして君の心に宿るのだ。 
 僕の方が君を愛している。僕に助けを求めれば、いつだって君のために、命だって賭す覚悟がある。それなのに。 

 町はゆっくりと復興する。小さな修道院も、隣町の大きな教会から援助を受け、町の人々からの寄付を受け、近々改築するらしい。 
 修道院での暮らしが戻ったのならば、グローリアは両手を組み合わせて感謝する事だろう。彼女の口から言葉が洩れる。「神よ」 
 いけない。僕は悔しさに唇を噛む。これ以上、神への信心でグローリアの心を埋めさせてはいけない。そこは、僕の入る場所だ。グローリアの心を埋めるのは、僕一人だ。 

 改築を取り仕切る連中の中に、ひとり強欲な男を混ぜた。金に弱く自分に弱く、女子供には酷く強い男だ。男は大きな態度に大きな声で、その場限りの信用を勝ち取る。その事だけに長けていた。 
 グローリア、君が傷つく姿を見るのは辛い。だけど許してくれ。これは僕たちのためなのだ。 

 男は期待に違わぬ仕事をした。大工に前金を支払おうというその前夜、男は素知らぬ顔で金を盗み、消えた。 
 翌朝の混乱は、見事なものだった。清廉な修道女たちが嘆き、町の者たちが口汚く男を罵る。 
 おかしなものだ。神にささげたはずの金が、一人の男の欲を満たす。真面目に誠実に生きる修道女たちを嘲笑いながら、欲に堕ちた者たちが金に埋もれながら暮らすのだ。 
 これでも神を信じられるかい? グローリア。忘れてしまえ、グローリア。 


 町に一人の男がやってきた。質素な服を纏った、頑健な体つきの男だ。なんという事はない、見た目が厳ついだけのただの平凡な旅人だ。しかし僕は、嫌な予感がした。 
 男は焼け落ちた修道院を見て、嘆く哀れな修道女たちを見て、豊かな髭を撫でながら笑った。 
「この建物を、私が建て直しましょう」 
「いいのですか?」と疑り深い目で誰かが尋ねると、男はなんて事ないように答えた。 
「神に仕える女性が住まうのです。放っておくほうが無理でしょう。なあに、食べるものと住む場所さえいただければ結構です」 

 男は敬虔な信徒であり、腕のいい大工だった。続けざまに不幸に見舞われて、疑り深くなっていた修道女たちも、次第に男を見る目が変わっていく。男は修道院を築きながら、修道女たちとの信頼も築いていった。 
 グローリアとも。 

 グローリアと男が、修道院の畑で話をしていた。 
「あなたはとても素晴らしい方です」 
 鋤を持ち、荒れた畑の土を返しながら、グローリアは言った。 
「愛に満ちあふれた、まるで聖人の様な方。誠実で力強く、大工としての才能にも溢れています。きっとあなたは、神にとても愛されているのですね」 
 無残な修道院を眺め、町に残る崩れ落ちた家々を眺め、最後に自分自身を眺めてから、グローリアは溜息をついた。心身ともに豊かな男と自分を比べているのだろう。 
「それなのに私は……」 
 悲しげな声で、グローリアは口を開いた。 
 僕はその続きの言葉が聞きたくて耳を澄ます。グローリア、僕には君が何を言いたいか分かっている。 
 君は神に愛されてなどいない。愛しているのは僕だけだ。さあ、グローリア。 
「あなたの髪は」 
 グローリアの言葉を遮るように、男は微笑みながら口を開いた。それどころか、その太い腕をグローリアに伸ばす。日に焼けた、野性的な男の腕にグローリアは少し怯えた。 
 男の手はグローリアの頭に手を伸ばし、修道帽から垂れた一房の髪を撫でた。グローリアの、見事な金の髪を。 
「とても美しい。きっとあなたが生まれる前に、神があなたの頭を撫でたのだろう」 
 はっとしたようにグローリアは男を見つめ、そして恥じらい俯く。彼女の口から、もう僕の望む言葉が出てくる事はないだろう。 
 男は去って行った。その後ろ姿を、グローリアは親愛と尊敬の念を込めて見る。どこか熱のこもった、輝く瞳で。 

 なんということだろう。君の髪くらい、僕がいくらでも愛でるのに。君はあの、薄汚い旅人の言葉に目を輝かせる。まさか、グローリア――あの男に心を奪われたわけではあるまいな? 
 ああ、グローリア。信じられない。僕という者がありながら、他の者にばかり心を移す。もう耐えられない、グローリア、グローリア! 

 遠くから眺めているだけなのは、もう止めだ。君の側に行こう、グローリア。僕を見たら、きっと君は他に目移りなどしないはずだ。待っていてくれ、君を夢中にさせてあげよう。 


「はじめまして」 
 修道院長に挨拶をする僕を、グローリアたちは遠巻きに見ながら騒いでいた。誰もが驚き、僕に注目する。僕の容姿は、神に仕えるはずの敬虔な乙女たちをも夢中にさせるのだ。 
「はじめまして、サー。こんなところまで、わざわざ」 
 何事にも動じなさそうな、枯れた木の枝のような修道院長が声を震わせる。信じられない、とでも言いたげに時折首を振り、十字架を握りしめた。 
「その……本当なんですの? この修道院のために、寄付をしてくださるというのは」 
「もちろんです。困っている女性がいれば手を差し出すのが、紳士の務めです」 
 僕を取り巻く人々の、称賛の声が聞こえてくる。若く、美しく、そして紳士的な伯爵。世の若い娘たちを虜にして止まない、魅惑の青年。欲もなく、誠実であり――聞き飽きた言葉ばかり。 
 だけど、グローリアがそう思ってくれるのなら、僕は嬉しい。 
 僕の目は、グローリアの居場所をすぐに見つけ出す。彼女は取り巻きの一人として、僕に目を奪われていた。彼女の心は今この瞬間、僕の事で占められている。 
 ああ、とても幸福だよグローリア。君が、もっともっと僕に夢中になればいい。 

 僕はしばらく、修道院に滞在する。神の側など吐き気がするが、これもグローリアのため。彼女を手に入れたのならば、どこか遠い遠い、神の光も届かぬ影の国にでも行こう。 
 グローリアの見つめる瞳は、他の娘たちと変わらない。憧れと期待を秘めて輝く。 

 男が旅支度を始めた。当然だ。もう男は、この修道院にいる必要が無くなったのだから。早く、どこかへ消えてしまえ。 

 祈り場で、男が祈る。十字を前に跪き、両手を握り合わせながら。 
 そこへグローリアがやってきた。 
「何を祈っていらっしゃる?」 
 男は祈りの姿勢を崩さず、横目でグローリアを見た。 
「旅の無事を」 
「旅? まさか、行ってしまわれるのですか?」 
「はい。あの紳士のおかげで、たくさんの腕のいい大工を雇えるでしょう。私はもう、用済みです」 
「そんな」 
 グローリアは口元を押さえ、傷ついたように俯いた。 
「あなたは私たちの恩人です。いつまでも、ここに居て下さっていいのですよ」 
「私は、何もしていません。結局、ただ飯を食らっていただけでした」 
「いいえ」 
 グローリアは悔しげに唇を噛み、男を睨みつけた。その怒りは憎らしさではない。彼女の男に対する――深い愛情だ。 
「あなたは、私たちに希望を与えてくれました。私たちが今、心健やかに生きていられるのは全て、あなたが居たからです」 
「そう言っていただけるのは光栄ですが……」 
「お願いです」 
 迷い始めた男に近付き、グローリアは神に祈るように手を合わせた。 
「せめて、もう少しだけでも――私が心を決めるための時間だけでも、ここに居てください」 
「あなたが、心を決める?」 
 男は何も気が付かずに聞き返した。グローリアの、赤に染まった頬にも気が付かずに。なんという、愚かな男だろう。なんという――。 
 愚か者は、僕だ。もっと早くに、グローリアの心を射止めておくべきだったのだ。 
 ああ、グローリア……。 

 おぼつかない足取りで道を歩くグローリアに、僕は声をかけた。 
「こんにちは、シスター」 
「こんにちは、サー」 
 グローリアはやや緊張した様子で、僕に微笑みかける。彼女の笑顔は、とても愛らしい。 
「何か考え事でも? 少し呆けていらっしゃるようですが」 
「あ……いえ、たいしたことではないのです」 
 焦ったグローリアの声を聞かずとも、僕には何を考えていたのか分かる。あの男の事だ。彼女の心の中には、すっかりあの男が住み着いてしまった。僕を前にしてもなお、彼女は男の事を考える。 
 追い出さなくては。 
 僕は好青年らしい、明るい笑みをグローリアに向けた。そして、安堵の息を漏らす。 
「シスターも、悩む事があるのですね。安心しました。悩みを抱え、苦しんでいるのは僕ばかりだと思っていましたから」 
「サー、あなたにも悩みが?」 
「ええ。ずっとずっと、悩みぬいている事が。そのことばかりが、頭から離れないのです」 
 グローリアは口を閉じ、悩むように首を傾げた。その瞬間、彼女の美しい金の髪が一房、零れ落ちる。僕はグローリアが次に口を開くまで、ずっとそれを見つめていた。なんと美しい。なんと魅惑的な。 
「私に話してみませんか? 誰かに話すことで、楽になるかもしれません」 
「ああ、ありがとうございます、シスター」 
 そう言って僕は頭を垂れた。ありがとう、愚かなグローリア。 
「実は今、僕は恋に悩んでいるのです。ある女性の事ばかり考えてしまう。けれど彼女は、他の男に夢中なのです」 
「まあ」と言って、グローリアは頬を両手で押さえた。思いがけない言葉だったのだろうか、微かに頬を染める。 
「あなたにも、そんな悩みがあるのですね。でも、あなたほどのお人なら、どんな女性でも夢中にさせてしまうでしょう」 
「いいえ、彼女はその男に、生涯を誓ってしまったのです。彼女は深く、その男を愛してしまった」 
「そんな、一体どのような男性が」 
 まるで自分自身が傷ついたように、グローリアは切ない声を出した。 
 僕はグローリアにそっと近づくと、彼女の顔を覗きこんだ。彼女は驚いて目を見開き、離れようとする。だから僕は逃がさないように、彼女の小さな手を掴んだ。 
「その男は――神です」 
 グローリアの指先を撫でながら、僕は囁いた。 
「彼女は神のためにその生涯を捧げてしまった。どれほど望んでも手に入らない、愛しいシスター。僕の心は、彼女に埋め尽くされてしまった」 
「な、なんという……」 
 瞳を伏せ、グローリアは震える声を出した。耳まで赤い彼女の姿に、僕は満足する。なんと可愛らしいのだろう、グローリア。 
「お戯れを……」 
「戯れではありません。シスター、僕を見てください」 
「わ、私など」 
 俯くグローリアの、垂れ落ちる一房の髪を掴んだ。それはひどく滑らかで、まるで金糸のようだった。 
「あなたは美しい。あなたの髪は陽光の様に輝き、僕を惹きつける」 
 グローリアの髪に口付ける。可愛い彼女は驚いて、僕を見上げた。やっと正面から見据えた彼女の瞳は、憧れと情熱が入り混じった、眩い光を湛えていた。 
 まるで――そう、まるで遠い空の星を見つめるように。 

 彼女は平凡でありすぎた。 
 美しく、魅惑的な貴族というものは、彼女の愛の矛先にはなり得なかったのだ。僕は完璧すぎた。彼女にとって、僕はただ憧れを抱くだけの、偶像にすぎなかった。 
 そして彼女が選んだのは、彼女に釣り合う凡庸な旅人。 

 グローリア、それでも僕は君を諦められない。僕は君が愛しい。そして、君の愛を得たあの男が、憎くてたまらない。 

 僕は男を殺すことにした。 
 男の旅立ちが間もないある夜のことだ。聖堂で祈る男に近付き、僕は穏やかに声をかけた。背中に、銀に光る剣を携えて。 
「熱心に祈っているね」 
「ええ」と男は膝をついたまま答えた。「私にできる事は、これくらいしかありません」 
「どうしてそんなに祈るんだい?」 
「神のしもべだからです。神が愛してくださった分、私は祈りで返さなくてはいけません」 
「へえ、君は熱心な信徒なんだね」 
 僕が言うと、男は少し身を固くした。嘲っているのが、分かったのだろうか。 
「そういえば」と男が、やけに低い声を出した。相変わらず祈りの姿勢を崩さずに、首だけ動かして僕を見る。 
「あなたが祈っているところを、私は見た事がありません」 
「そうだったかな」 
「あなたはこの聖なる場所に居ながら、一度も膝をつかない。ミサにも姿を見せない。あなたは――」 
「君は」 
 僕は男の言葉を遮り、微笑んだ。この男は、もっと早くに始末してもよかったかもしれない。 
「神の愛を信じている?」 
「当然です」 
「そうか、でも残念だ」 
 僕は剣を両手で握りしめ、頭上に高く振り上げた。驚き目を見開く男を嘲笑い、僕は言った。 
「神は君を愛してはくれなかったようだ」 

 騒ぎになった。グローリアの嘆きようは凄まじかった。 
 あの男を愛していたんだね、グローリア。だけど、早く忘れるがいい。大丈夫だ、僕が慰めてあげるよ。 
 グローリア、愛しいグローリア。 


 しくじった事が一つ。 
 男を殺した瞬間を、見ていた女が居た。女はしばらく黙って日々を過ごしたが、ある日耐えきれなくなって別の女に話をした。別の女は、さらに他の人間に伝えた。 
 その事に気が付いた僕は、すぐさま女を殺した。話が伝わった、別の女も殺した。そうして話を知る人間を、糸を手繰るように殺していった。 
 修道院の人間が、少しずつ減っていく。 
 誰かが言った。「これは悪魔の仕業である」 

 そして、グローリアがその事を知った。 

 グローリアが、苛烈な眼差しを僕に向ける。愛しい男を殺した悪魔、彼女の瞳がそう訴えかける。それは半ば絶望であり、半ば喜びであった。 
 彼女の瞳には、僕しか映らない。彼女の心は、僕への憎しみだけで占められている。 
 嬉しいよ、グローリア。君の心を得るために、こんな方法もあったのだね。 

 僕はまだ、グローリアを殺せなかった。だから町の人々は、僕が何をしたかを知っていく。さざ波のように伝わるうわさは、いつしか僕がこの町にしてきたこと、全てを暴きだしていた。 
 僕が修道院から離れなかったから、他の人々が出て行った。修道院は、僕一人だけの家になった。 
 誰かが言った。神をも恐れぬ背徳者の手によって、修道院は血の滴る闇のねぐらとなってしまったと。出て行ったのは、自分たちのくせして。 

 町の人々は、僕を悪魔として殺すつもりらしい。首を切り落とし、神の前に捧げるのだと騒ぐ。 
 なんと愚かしい事だ。お前たちに、僕が殺せるものか。 
 人々は剣を持ち、僕に向かってやって来る。僕は彼らの首と胴体を切り離し、無事に町に送り返した。何度も何度も繰り返し――そしてやってきたのが、グローリアだった。 

「待っていたよ、グローリア」 
 僕は両手を開いて、グローリアを歓迎した。彼女は頼りなく小さな剣を握りしめ、切っ先を僕に向ける。その切っ先と同じくらい鋭く、僕を見据えながら。彼女は今、現実のものとして僕を見ている。 
 グローリアは剣を握りしめ、僕に向かって振り上げた。僕は抵抗する事なく、グローリアの体ごと受け止める。鈍い痛みを感じたけれど、それ以上にグローリアが温かだった。 
 グローリア、僕は幸福だよ。君の柔らかな肌を、こんなにも近くに感じられる。 

 グローリアは剣を突き立てる。僕は彼女の体を感じながら、その首筋に手を伸ばし、優しく絞めた。彼女が僕の肉を抉るたび、僕は首に当てた手に力を込める。 
 僕たちは二人、きっとここで死ぬだろう。血の湛えられた床の上で、僕たち二人は抱き合うようにして死んでいく。 
 それはいずれ、町の人々に見つけられるだろう。彼女の死は、口々に称えられるに違いない。命と引き換えに、悪魔を滅ぼした聖なる乙女。勇敢な、神の使徒である、と。 

 君は英雄となる。君の平凡な生は、非凡に幕を閉じ、そして語り継がれていくだろう。 
 ――僕の名前とともに。 

 先の世で、誰かが君の名を呼ぶ時には、必ず僕もいるはずだ。君の物語に僕は無くてはならない存在になる。僕と君とは、決して切り離せない。神にだって。 
 僕はなんて幸福なのだろう。グローリア。 
 血濡れた手で、息絶えて行くグローリアの金の髪を撫でながら、僕は小さく囁いた。 
 僕は幸せだ。ずっと君といられるのだから。グローリア――僕の、愛しのグローリア。 



終わり



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